野本定金佐藤ら「恒星」を眺めた。
一時間で279ページまで進んだ。
福井康雄・犬塚修一郎・大西利和・中井直正・舞原俊憲・水野亮(編)「星間物質と星形成(シリーズ現代の天文学6)」2008年、日本評論社
を眺め終えた。
福井康雄・犬塚修一郎・大西利和・中井直正・舞原俊憲・水野亮(編)「星間物質と星形成(シリーズ現代の天文学6)」2008年、日本評論社
を眺め始めた。
一時間で38ページまで進んだ。
祖父江義明・有本信雄・家正則(編)「銀河II 銀河系(シリーズ現代の天文学5)」2007年、日本評論社
を眺め終えた。
銀河Iと同様に私には絶望的に難しい。
執筆者も20名ほどいる。
このあまりにも多い執筆者は銀河系の研究を一人の人間で理解できることが
不可能であることを示しているかもしれない。
物理の人はいつ読んでも難しいと思うので、いつ読んでも構わないと思う。
谷口義明・岡村定矩・祖父江義明(編)「銀河I 銀河と宇宙の階層構造(シリーズ現代の天文学4)」2007年、日本評論社
を眺め終えた。
インターネットでよく見かける物理の研究者のキャリアパスの助言では、以下のように書かれていることが多い。(私は卒研が理論物理であったために、以下の話は理論の場合に限る。)
大学院で博士号を取る→国内、または海外の大学、研究所などで博士研究員として働く→場所を変えて博士研究員を2,3回やる→運が良ければ、大学などの教員に収まる。
私も上記のキャリアパスを信じていたが、物理の研究者のウェブサイトのネットサーフィンを長年していると、例外が多いことに気が付いた。
ネットサーフィンから得た情報をまとめると
「素粒子物理学、宇宙物理学で優秀で運がいい人は博士号取得後5、6年で任期がない職(助教や講師)になることが一つの目安となっている。」
「それ以外の物理の分野では、優秀な人は博士号取得後0~2年で任期がない職になることが一つの目安となっている。」
「素粒子物理学、宇宙物理学で、優秀でも運が普通な人は大学教員になる前に博士研究員として過ごす時期が異常に長い。」
「2022年現在、女性限定公募が多く出ており、素粒子物理学、宇宙物理学分野でも、博士号取得後0~2年で任期がない職になるケースが多数出てきている。」
少し詳細を書くと以下のようになる。
(い)素粒子物理学と宇宙物理学はマラソンで、それ以外の物理の分野は短距離走に例えることができる。短距離走が苦手で、マラソンでないと勝てない人もいるので、これはこれで良いんじゃないかと個人的に思う。しかし、20年(博士研究員10年+任期付き助教10年)耐久マラソンが普通になってくると日本の素粒子物理学と宇宙物理学に明るい未来はない。
(ろ)短距離走の場合は、大学院にいる間に大学教員椅子取りゲームのほぼ決着がつく。修士課程と博士課程の学生が増え、多くの学生が学位取得と共に就職することを除けば、昔とほとんど変わっていないように見える。
(は)ネットに書かれている先達によるキャリアパスの助言は、分野がちょっと変わると的外れなので、たとえ真実であっても、その適応範囲は非常に狭いことを肝に銘じておくべきである。
(に)インターネットで見かけるキャリアパスは素粒子理論と宇宙物理が多い。自分の分野の将来を憂いて、善意で書かれているのだと思うが、結果として、非常に強いバイアスを持つ情報をインターネットにさらしている。
(ほ)素粒子物理学や宇宙物理学と一言でいっても、かなりの広い分野を含んでいるため、さらに細分化され、状況はまちまち。
(へ)高校から物理を選択する時点で女性は少ない。物理系学科では、女性はさらに少なくなるため、学生時代は男性には分からない障害がたくさんあるかもしれない。でも物理が好きな女性よ、物理を諦めないで!任期のない職を見つけるのが難しいという情報は男性の場合である。最近は女性限定公募が増えたため、素粒子物理学や宇宙物理学でもポスドクや任期付き助教を経ずに(、または一回だけのポスドクを経て)任期なしの助教になるケースも多い!
(と)物理学科でも一般教養の学科でもなく、隣接分野の学科に着任する人がいる。例えば、数理的傾向が強めの物理の人が数学科に着任するケースがぼちぼちある。そうすると、その学生は数学科出身で数理的な傾向の強い物理を研究し、物理学会に所属するが、素粒子物理学や宇宙物理学のキャリアパスというよりも数学者のキャリアパスに従うことになる。数学者のキャリアパスはポスドクを0~1回経験して助教になるケースが多いようである。
興味ある分野が短距離走かマラソンか知りたい場合は、主要な大学や研究所の助教と准教授の経歴をできるだけ多く調べるとよい。助教や准教授が博士研究員をしていたか、していた場合はその期間は何年か、任期付きの助教を何度か経験していたか、などの経歴を調べるとよい。(着任が10年以上前の人の情報は古くて役に立たないと思った方が良い。)
結論を述べる。ネットでは、研究大学の良いポストを得たと自認した人が、彼らの言う、研究大学の良いポストをいかにして得るべきか、助言をしている。私はこれらの助言を娯楽としてよく読むが、読んだ後は必ず嘔吐したくなるような不快さを感じる。彼らが特殊な例を不当に一般化しているのを見て、平静を耐えられないからであろう。
谷口義明・岡村定矩・祖父江義明(編)「銀河I 銀河と宇宙の階層構造(シリーズ現代の天文学4)」2007年、日本評論社
を眺め始めた。
一時間で36ページまで進んだ。
下に大きくはみ出た子供への支援は分かりやすいが
上に大きくはみ出た子供への支援は分かりにくいので
ギフテッド関係のリンクを作っておく。
職業上、様々な子供と関わるが、
平均から上に大きくはみ出た子供も下に大きくはみ出た子供も生きづらそうである。
そして、日本の公教育はあまりにもその両方に不寛容である。
文部科学省は何十年も小学校から大学院まで現場の人間を疲弊させて
体調を崩させて離職させるような計画を立て、
現場に無意味な数字の達成を押しつけている。
「何とかの何人計画」「何とかの何とか化計画」「かっこいいカタカナをつなげた計画」
など、今後も現場は気まぐれに振り回されつづけるのだろう。
公務員の首を切ることができないので、
人減らしのために行っているのかもしれない。
日本政府は何十年も内部から教育を破壊し続けている最中なので
支援を頼るべきではなく、自分たちで考えなければなるまい。
責任者の官僚らに告ぐ。
退職後に、自分で始めた「何とか計画」で作った大学教授のポストや関係機関に天下ることなく、小学校から高校までの教職員として、泥にまみれて教育現場で働け。
自分たちが天下るために実務経験のある教員の制度を作るな。開発現場を退いてかなり年数がたっているベテランに若者への教育効果を期待するな。
数十年前に流行が始まった分野の教育改革を初等教育で始めるな。これからの50年で重要になる分野を見据えて教育改革を行え。
大学・大学院で米国の真似をするような制度を作るな。米国の制度は米国の世界一潤沢な資源に裏づけられた環境で世界一の成果が出るように設計されている。日本にそのまま移植しても、疲弊するだけである。
子供の数が減っていることを理由にして、教育の基盤となる予算を削るな。
(各大学の偉い人へ。米国の大学の上っ面をまねた授業アンケートも止めてしまえ。授業アンケートが悪ければ、教員の首を切るシビアさも取り入れない限り、資源の無駄である。)
小学4年で英検準1級に合格した「ギフテッド」少年の生きづらさ 「正直、学校は好きじゃない」と適応に苦しみ(1/3)〈dot.〉 | AERA dot. (アエラドット)
二間瀬敏史・池内了・千葉柾司(編)「宇宙論II 宇宙の進化(シリーズ現代の天文学3)」2007年、日本評論社
を眺め終えた。
本書は10人の著者によって書かかれていることと
観測的宇宙論と呼ばれる理論と観測をつなぐ
多くのことを知っていないといけない分野の本であることから、
教科書として読み通すことが非常に難しいと感じた。
出版された当時は本書以外に他にこの分野で
当時の研究につながる最適な和書は存在しなかったので、
和書で勉強しようと思うと、これを読むしかなかった。
大抵の人は洋書の定番の教科書で勉強していたと思われる。
しかし、今は和書でも選択肢は増えていると思う。
私はこの分野に明るくないので、本書がどれくらい読むに値するのかは
よくわからない。
大学の物理の基礎的な科目を一通り学び終えた
大学4年生程度から読み始めるのが最適だと思う。
二間瀬敏史・池内了・千葉柾司(編)「宇宙論II 宇宙の進化(シリーズ現代の天文学3)」2007年、日本評論社
を眺め始めた。
一時間で33ページまで進んだ。
渡部潤一・井田茂・佐々木晶(編)「太陽系と惑星(シリーズ現代の天文学9)」2008年、日本評論社
を眺め終えた。
このシリーズの別の天体を扱った巻とは、だいぶ印象が異なる。
太陽系は他の分野と比べて圧倒的にデータ量が豊富であるためか、
本書は天文学の特有の香りが強い。
世間一般的には宇宙とはスペースシャトルが飛んでいる空間か
せいぜい太陽系のことである。
私にはそれが不満の種ではあるが、
本書を見る限り、この分野は天文学の他の分野よりも、
圧倒的に進んでいることが伺える。
私は不満を飲み込むしかない様である。
本書は20名の著者で書かれている。
正直に言って、かなり読みづらい。
研究現場では細分化が進んでいるはずで、
本書に書かれていることの全てを
専門としている人はおそらく誰もいないと思う。
いつ読んでも難しいので、いつ読んでも良いと思う。
北山哲「銀河団」2020年、日本評論社
を眺め終えた。
実際の銀河団の研究がどうなっているかわからないので、
非常に感想を書きづらいが、
銀河団を勉強する人が身に着ける基礎的な物理の理論をまとめた本。
私にとっては、この本で説明されている物理過程は
ほぼすべてどこかで勉強したことある。
しかし、通常、これらの内容は複数のテーマの本を読んだり、
様々な授業やゼミで勉強するものであり、
250ページにまとめた和書というのは
いままでに見たことがない。
(洋書では、本書の内容を一冊の本で記述したものもあるのかもしれない。)
おそらく、この本の最大の意義は
銀河団の専門家が、銀河団を理解するためには
これだけのことは最低限勉強しておくべきだと
一冊の本として明確に示したことであろう。
実際に新たにこの分野に参入する学生にとって読みやすいかどうかは不明である。
私はぺらぺらとページを繰っていると今までに見たことのない
内容の組み合わせに新鮮味を覚える。とても面白い本だと思う。
大学4年生ならば、読めると思う。
福江純、和田桂一、梅村雅之「宇宙流体力学の基礎」日本評論社(2014年)
を眺め終えた。
天文学分野で使う流体力学をざっくりと説明している本。
大学4年から十分に読める。
この本がどれだけいい本なのか、よくわからない。
梅村雅之、福江純、野村英子 「輻射輸送と輻射流体力学」(2015年)日本評論社
を眺め終えた。
天文学で使われる物理学について書かれている。
福江氏は本を書くのがかなり速いようで、
天文学のシリーズものでは福江氏の本だけ早めに出ている印象がある。
このシリーズは演習問題とその答えが載っていることが印象的である。
しかし、巻末に解答にFukueの論文を見ろと書いてある問が8つもある。
正直に言って、このやり方は教科書として、よろしくないと思う。
私は天文学をあまり良く知らないので、この本に書いてあることが
教科書して適切なのか、わからない。
本質的に扱われている物理学は本質的に難しいものである。
その扱いや単純化が適切なのかも、私には判断できない。
大学4年生から読め始められると思う。
千葉柾司「銀河考古学」(2015年)日本評論社
を眺め終えた。
本のタイトルは怪しげであるが、
内容は伝統的なものである。
近傍の銀河の古い星を調べる学問分野が
銀河考古学と呼ばれているらしい。
極めて天文学的に書かれているため
物理学科やそれに準ずる学科に属する学生は
いつ読んでもいいと思う。
読んでいると
この学問分野の難しさが
しみじみと感じられる。
田村元秀「太陽系外惑星」(2015年)日本評論社
を眺め終えた。
太陽系外惑星の観測の教科書。
天文学は私の専門外であるが、
これはとても面白い本である。
観測の歴史の部分も見事な書き方である。
系外惑星の発見が
どのように専門家に疑われたり、
広く支持されたりするのか
目から鱗が落ちるようなことも書かれている。
多くの観測方法が章ごとに良くまとまっており、
それらの関係性も良くまとまっている。
著名な観測例も説明されている。
読んでいて、
単純に面白い。
大学1年生でも大学4年生でも
楽しめると思うので
いつ読んでも良いと思う。
井田茂、中本泰史「惑星形成の物理 太陽系と系外惑星系の形成論入門」(2015年)共立出版
を眺め終えた。
惑星形成の物理の本。
単純な物理過程が説明された後に、
それでうまく説明できそうとか
実際はそれほど単純ではないとか、
著者のコメントが続く。
それが何度も何度も繰り返されている本。
惑星形成の物理プロセスに興味がある人が
読むべき本。
興味がある大学3年生ならば、
読み始めることができると思う。
井田茂、中本泰史「惑星形成の物理 太陽系と系外惑星系の形成論入門」(2015年)共立出版
を眺め始めた。
一時間で43ページまで進んだ。
吉田直紀「宇宙137億年解読」2009年、東京大学出版会
を眺め終えた。
著者の吉田氏といえば、大規模構造のシミュレーションの研究で有名である。
本書はほとんど数式を使わない宇宙論の平易な入門書である。
シミュレーション天文学の入門書ともいえる内容であり、
相対論的宇宙論や素粒子的宇宙論とも異なった記述の仕方である。
一般相対論の記述はほとんどない。
個人的には「何か説明できない天文現象があると
ブラックホールを持ち出してくる宇宙物理学者が必ず現れる」
というブラックホールに対する懐疑的な記述が印象的である。
最後の方は、本質的に難しい物理過程に関する話なので、
消化不足になってしまったが、おおむね分かりやすい。
記述は平易であるが、最先端の話題を扱っているため、
もしかしたら10年以上たったいまでは、古くなってしまった
記述もあるかもしれない。
しかし、この分野に精通した人でなければ、
十分に読む価値があると思う。
この本は大学一年生で読めると思う。
青木慎也「格子QCDによるハドロン物理」2017年、共立出版
を眺め終えた。
著者の青木慎也氏は格子QCDの研究者として有名である。
本書は数式と図を使った、格子QCDの本格的な薄い入門書である。
青木氏による日本語による入門書ということで、
一読の価値はある。
数値計算を使う分野なので、
本当に理解するには、
青木氏のグループに入って実際に計算するしかないと思う。
大学3年生か4年生ぐらいに、
こういう分野があるということを理解するために、
読むのが良いと思う。
小山勝二・嶺重慎(編)「ブラックホールと高エネルギー現象(シリーズ現代の天文学8)」2007年、日本評論社
を眺め終えた。
ブラックホールがメインの本と思わせるタイトルだが、
実際には
白色矮星、中性子星、ブラックホール、降着円盤、降着流、ジェット、
宇宙線、重力波、ガンマ線バーストなどについて、
それぞれの専門家が分担して書かれている
コンパクト天体と高エネルギー現象の本である。
全体的に数式の使用は自重されている。
しかし、著者は18名おり、
数式を使って物理過程を追うのが好きな人がいれば、
ポンチ絵と表が好きな人もいる。
一見、統一が取れた記述で書かれているように見えるが
実際に読んでみるとそれぞれの著者の文章の癖があって、
読み通すことはかなりしんどい。
興味がある学生は細かいことは気にせずに、
気になった時に読み始めればいいと思う。
小山勝二・嶺重慎(編)「ブラックホールと高エネルギー現象(シリーズ現代の天文学8)」2007年、日本評論社
佐藤勝彦・二間瀬敏史(編)「宇宙論Iーー宇宙の始まり」2008年、日本評論社
を眺め終えた。
いわゆるビッグバン宇宙論とインフレーションが主な内容。
終わりの方にブレーン宇宙論について結構ページが割かれているのは
本書が出版される数年前にブレーン宇宙論が流行したためだと思われる。
このシリーズの中では比較的少ない6名の著者によって書かれているため
相対論的宇宙論を専門とする人には比較的読みやすいかもしれない。
しかし相対論的宇宙論を専門としない、
天文学を勉強したい普通の読者にとっては
本書の内容自体はかなり難しい気がする。
執筆された当時は和書の宇宙論の教科書は少なく、
本書は良い選択肢の一つだったかもしれない。
幸いなことに現在ではもっと選択肢は多い。
第2版も出版されている。
松田卓也、二間瀬敏史「なっとくする相対性理論」1996年、講談社
を眺め終えた。
前半の特殊相対論は松田氏
後半の一般相対論は二間瀬氏
が執筆している。
同じレベルの2冊の本をくっつけたような印象を受ける。
一般書よりも数式を使っているが、
普通の教科書よりも数式は易しめというレベルの本。
大学2年生ぐらいならば読めると思う。
夏休みとかに気晴らしとして読む本な気がする。
二間瀬氏は本書の原稿を読んでくれた学生のことを
あまり物理を理解していないとおちょくっているが、
ググると何人かは研究者として活躍しているようである。
二間瀬敏史「なっとくする宇宙論」、1998年、講談社
を眺め終えた。
数学的にやさしい宇宙論の一つ。
すこしだけ数式を使うことで、
一般書よりも深く理解できる。
通常の教科書としては物足りないが
専門的な内容の多くを求めない人にとっては悪くない本だと思う。
大学1,2年生程度の数学の知識で十分読める。
しかし、私は応用する前に基礎的な物理
を理解すべきだと信じているので、
一般相対論の半年の入門講義を受けたり、
一般相対論の入門書を読破した後に
読み始めるべきだと思う。
著者は一般相対論や宇宙論の研究者で、
たくさんの本を書いている。
須藤靖「ダークマターと銀河宇宙」1993年、丸善株式会社
を読み終えた。
本書は天文の理論の人が書いた天文の理論の本である。
おそらくこの30年間で
ダークマターについては大して進展がなかったと思うが
銀河についてはある程度進展があったかもしれないので、
知識をアップデートした方がよいかもしれない。
宇宙論では加速膨張が見つかったので、宇宙論の知識もアップデートした方がよい。
小玉氏のダークマターの本と比べてあまりにも雰囲気が違うが
天文的なアプローチと素粒子論宇宙論的なアプローチの違いである。
自分のアプローチの選択は趣味の問題なので
研究室を選ぶ学生は興味のある研究対象だけでなく
興味のあるアプローチを見極める必要がある。
このような本を研究室に配属される前に読んでおくことは有益だと思う。
配属された研究室のアプローチが自分に合わないと思った場合は
研究室内で戦わずに、
卒論や修論をとりあえず仕上げて、
別の研究室に移る方が良いだろう。
小玉英雄「宇宙のダークマター」サイエンス社、1992年
を眺め終えた。
数理科学の連載をまとめた本。
ダークマターは未知の素粒子で説明できるだろうという
アプローチに基づいている。
著者のウェブサイト
に書いてあるように相対論的宇宙論の摂動や高次元ブラックホール摂動の研究で有名。
日本の一般相対論の教科書を読んでいると
小玉さんにお世話になったという記述を見かける。
小玉さんの本は数理的な側面が強くて
私にはつらいが、
雑誌の連載であったためか、
本書は比較的楽に読める。
おそらく、研究室を選ぶときに
宇宙論とか素粒子とか天文学に興味がある人が
眺めてみると良いと思う。
30年前の本である。
30年間でダークマターの理解は
たいして進歩していないはずなので
ダークマターに関してブレイクスルーが起きるまでは
本書はダークマターの素粒子的宇宙論アプローチの概観を
理解するために有益であると思う。
宇宙論では加速膨張が見つかったので、宇宙論の知識はアップデートした方がよい。
海部宣男「望遠鏡」2005年、岩波書店
を読み終えた。
望遠鏡の入門的な内容について、についてコンパクトにまとまった小さい本。
これくらいならば、私のような天文観測のことを何も知らない人でも最後まで読み切れる。
岡村定矩他編集「人類の住む宇宙 (シリーズ現代の天文学 第1巻)」2007年、日本評論社
を眺め終えた。
シリーズ現代の天文学の第1巻である本書は
天文学の入門的な内容を扱っている。
好きな時に読み始めればよい本だと思う。
出版された当時から
私は「シリーズ現代の天文学」を
大変読みづらいと感じている。
学生の時に読んだときは、
自分の知識が乏しいから
読めていないのだと感じていた。
しかし、改めて読んでみると
読みづらさは
かなりの数の専門家が分担して書いていることに起因している
と感じる。
このシリーズでは
それぞれの専門家が担当部分を好き勝手に書いている。
専門家は著作に自身の好みを強く出す。
読みやすく編集できるわけがない。
普段、高校レベルの物理なんて振り返らないが
諸事情で高校物理の熱の問題を解く羽目になり、
一時間ほど高校物理の本やウェブの記事を見て過ごした。
高校物理の熱は難しい。
教科書や参考書は
つながりが明確でない現象の集まりのようで、
ネットで検索した記事は怪しげな記述であふれており、
どこから手を付けていいのかわからない
と感じた。
そんな印象なので、
解く羽目になった問題についても
「作問者もよく理解できてないよね?」
と感じている。
個人的には
大学の物理の教科書の方が、ましである。
柴田大「一般相対論の世界を探る」2007年、東京大学出版会
を眺め終えた。
中性子星連星の合体や
ブラックホール連星の合体による重力波放射を
いくつかのグループが計算できるようになった時期の
成果をまとめた重力波と数値相対論の教科書。
1章はコンパクト天体についての優れたレビューになっている。
2章は重力波天文学の短いレビューであり、
3章では一般相対論の教科書で見るような重力波の理論が紹介される。
4章では主に重力波発生のシナリオを紹介し、データ解析にも触れている。
5章から7章で数値相対論のための定式化、テクニック、シミュレーション結果が述べられる。
一般相対論の教科書を一冊読んだことがあり、
重力波と数値相対論について知りたい読者は
スムーズに読むことができると思う。
一般相対論を習ったことがある
大学4年生ならば読むことができると思う。
後半からテーマは中性子星の連星に絞られる。
これは著者の柴田氏の研究に沿ったものだからであろう。
本書の後の柴田氏の研究は
柴田氏や共同研究者が書いた記事を探せば
日本語で読むこともできる。
嶺重慎「ブラックホール天文学」、2016年、日本評論社
を眺め終えた。
本書では天体としてのブラックホールを議論しているが、
主役はブラックホールの周りで光る降着円盤である。
アインシュタイン方程式のブラックホール解の性質を調べるのではなく、
ブラックホール周辺のガスの運動方程式の解の性質を調べる
アプローチが取られている。
私には天文学の徹底した教育を受けていないために
天文学とはかくあるべしという心構えが身についていないが
いかにも天文学っぽい話の進め方な気がする。
この本を読むためには
・大学3年生までの物理
・半年程度の一般相対論の入門的内容
・本書で触れられる程度のKerr解の性質
・本書で触れられる程度の天文学の素養
を知っておくとよい。
大学4年生から読み始められると思う。
佐々木節「一般相対論」産業図書,1996年,
を読み終えた。
黒田和明氏による物理学会誌での書評へのリンク
佐々木 節, 一般相対論, 産業図書, 東京, 1996, vi+188p., 21×15cm, 2,575円 (物理学教科書シリーズ) [学部向]
を貼っておく。
著者の佐々木節氏は相対論的宇宙論の論文で有名な研究者である。
他の一般相対論の入門書と同様、
3,4年生で読めるレベルの本である。
数理物理的な書き方ではなく
標準的な理論物理の学生が好む方で書かれている。
扱っている内容と説明の順番は標準的であり、
最初の数章で数学的準備をした後に
アインシュタイン方程式が出てきて、
物理を考える構成になっている。
本書に限らず、
多くの一般相対論の標準的な教科書
にあてはまることだが
物理に興味のある初学者は
物理にたどり着く前に撃沈する可能性が高い。
本書で扱われている発展的な話題を挙げると
定曲率空間のトーラス的コンパクト化や
カントフスキー・ザックス型宇宙
などがある。
これらは専門家は知っておくべきことなのかもしれないが、
他の一般相対論の入門書と比べると
ディープな話題である。
Kerr解やペンローズ図は出てこない。
この本の優れたところは、
基本的な内容と発展的な内容が
コンパクトにまとまっていることである。
初学者にとって本書の厄介なポイントは
標準的な内容を説明している最中に
発展的な内容がさりげなく一緒に説明されることである。
初学者は撃沈するかもしれない。