佐々木節「一般相対論」産業図書,1996年,
を読み終えた。
黒田和明氏による物理学会誌での書評へのリンク
佐々木 節, 一般相対論, 産業図書, 東京, 1996, vi+188p., 21×15cm, 2,575円 (物理学教科書シリーズ) [学部向]
を貼っておく。
著者の佐々木節氏は相対論的宇宙論の論文で有名な研究者である。
他の一般相対論の入門書と同様、
3,4年生で読めるレベルの本である。
数理物理的な書き方ではなく
標準的な理論物理の学生が好む方で書かれている。
扱っている内容と説明の順番は標準的であり、
最初の数章で数学的準備をした後に
アインシュタイン方程式が出てきて、
物理を考える構成になっている。
本書に限らず、
多くの一般相対論の標準的な教科書
にあてはまることだが
物理に興味のある初学者は
物理にたどり着く前に撃沈する可能性が高い。
本書で扱われている発展的な話題を挙げると
定曲率空間のトーラス的コンパクト化や
カントフスキー・ザックス型宇宙
などがある。
これらは専門家は知っておくべきことなのかもしれないが、
他の一般相対論の入門書と比べると
ディープな話題である。
Kerr解やペンローズ図は出てこない。
この本の優れたところは、
基本的な内容と発展的な内容が
コンパクトにまとまっていることである。
初学者にとって本書の厄介なポイントは
標準的な内容を説明している最中に
発展的な内容がさりげなく一緒に説明されることである。
初学者は撃沈するかもしれない。