吉田直紀「宇宙137億年解読」2009年、東京大学出版会
を眺め終えた。
著者の吉田氏といえば、大規模構造のシミュレーションの研究で有名である。
本書はほとんど数式を使わない宇宙論の平易な入門書である。
シミュレーション天文学の入門書ともいえる内容であり、
相対論的宇宙論や素粒子的宇宙論とも異なった記述の仕方である。
一般相対論の記述はほとんどない。
個人的には「何か説明できない天文現象があると
ブラックホールを持ち出してくる宇宙物理学者が必ず現れる」
というブラックホールに対する懐疑的な記述が印象的である。
最後の方は、本質的に難しい物理過程に関する話なので、
消化不足になってしまったが、おおむね分かりやすい。
記述は平易であるが、最先端の話題を扱っているため、
もしかしたら10年以上たったいまでは、古くなってしまった
記述もあるかもしれない。
しかし、この分野に精通した人でなければ、
十分に読む価値があると思う。
この本は大学一年生で読めると思う。