2024年7月20日土曜日

岩井「多電子系の超高速光誘起相転移」を眺め終えた

岩井伸一郎「多電子系の超高速光誘起相転移」共立出版(2016年)
を眺め終えた。

本書はかなり難しい。大学生が読むには難しいだろう。光誘起相転移に興味がある人が好きな時に読めばいいと思う。

2024年7月19日金曜日

岩井「多電子系の超高速光誘起相転移」を眺めた

岩井伸一郎「多電子系の超高速光誘起相転移」共立出版(2016年)
を2時間眺めた。
69ページまで進んだ。

2024年7月18日木曜日

辻川「入門現代の宇宙論」を眺め終えた

辻川信二「入門現代の宇宙論」講談社(2022年)
を眺め終えた。

本書は大学3,4年生向けに作られた相対論的宇宙論の本である。一般相対論のことを知らない人向けに作られており、付録に少しだけ一般相対論のことが述べられている。

本書は基礎的なことから始めて、かなり難しいことまで述べられている。本書を読み通すことが出来れば、相対論的宇宙論の基本的なことは理解したと言ってよいだろう。辻川氏のような専門家が授業で使ったり、ゼミで使ったりすれば学生も何とか読み通すこともできるだろう。しかし、相対論的宇宙論に興味がある人が一冊目に独学するには難しすぎるレベルだと思う。

2024年7月17日水曜日

辻川「入門現代の宇宙論」を眺めた

辻川信二「入門現代の宇宙論」講談社(2022年)
を2時間眺めた。
124ページまで進んだ。

2024年7月16日火曜日

一丸「高密度プラズマの物理」を眺め終えた

一丸節夫(著)吉田治(訳)「高密度プラズマの物理」日本評論社(2020年)
を眺め終えた。

原書は2019年出版にされた「Statistical Physics of Dense Plasmas: Elementary Process and Phase Transitions」である。著者の一丸氏はプラズマ物理で多くの国際的な賞をとっている有名な物理学者らしい。本書は一丸氏のこれまで行ってきた研究と興味がある研究をまとめたような本。本書では多くの一丸氏の論文が引用されている。この本で扱われている内容がメジャーなものなのかどうかは私にはわからない。多くの内容が知らない内容で面白く、興味を持って眺めることができた。

本書のレベルは高く、大学生が読むレベルではない。論文を読んでいて、一丸氏の論文が出てきたら、この本もチェックしてみると良いかもしれない。

2024年7月15日月曜日

ホーキング編「「ホーキング、宇宙を語る」ガイドブック」を読んだ。

(編)スティーブン・W・ホーキング (訳)林一 「「ホーキング、宇宙を語る」ガイドブック」1992年、早川書房
を読んだ。

2022年11月28日に俳優の渡辺徹さんが亡くなった。子供向けのゲームのテレビ番組の司会を長年やり、妻の榊󠄀原郁恵さんとともにバラエティー番組でも活躍した渡辺徹さんは私にとって家族のように親しみのある人である。渡辺徹さんは体重の増減が激しく、テレビを見ていた人はみんな家族のことのように渡辺徹さんの体調を心配し、榊󠄀原郁恵さんの心労も慮っていたと思う。渡辺徹さんの声は非常に心地よいので、私は渡辺徹さんがナレーションをする地球ドラマチックという番組の虜になった。この番組は海外の科学番組を編集して放送するというものであり、見ているとNHKで制作され毎週放送される科学番組のつまらなさに我慢できなくなる。日本の科学番組は科学だけを見せようとするあまり、人の存在を排除しようと努めていることに気が付く。それが番組の面白さを台無しにしている。地球ドラマチックで紹介される科学番組は科学者が仮説を立てて検証する過程も描かれて、科学者にも敬意が払われている。科学者がメインというわけではないが、科学者の理解しがたい異常な情熱や成功の喜びや失敗の苦悩などの人間らしさのほのかな香りも感じられる構成になっている。日本の科学番組は絶対に間違っていると私は思う。

本題に入るが、本書の原書は「STEPHEN HAWKING'S A BRIEF HISTORY OF TIME: A Reader's Companion」であり、1992年に出版されたようだ。内容は映画「ホーキング宇宙を語る」の完全版の書籍化といったところである。ホーキングのドキュメントとブラックホール研究の紹介が絶妙なバランスで描かれており、本書を読めばいかに海外の科学番組が優れていたのかがわかるだろう。一般相対論を勉強した後に読むと出演メンバーの豪華さにも気が付くと思う。


2024年7月14日日曜日

一丸「高密度プラズマの物理」を眺めた

一丸節夫(著)吉田治(訳)「高密度プラズマの物理」日本評論社(2020年)
を2時間眺めた。
98ページまで進んだ。

2024年7月13日土曜日

2024年7月12日金曜日

田中「相対論」を眺め終えた

田中貴浩「相対論」東京図書(2021年)
を眺め終えた。

背表紙と表紙にシリーズの監修者の益川氏と編集者の植松氏と青山氏の名前がでかでかと載っており、ぱっと見、誰が著者なのか全く分からない。ネットで注文するときも同じような感じである。

この本の冒頭には益川氏と植松氏と青山氏の雑談が載っている。相対論の教育や研究とは無縁であろう老人たちのしょーもない雑談である。私はこのシリーズで東京図書が大嫌いになった。

それはともかく、本書は一般相対論の入門書である。著者の田中氏は京都大学の教授であり、日本の相対論分野の若手研究者を引っ張っている人らしい。

補章を含めて12章もある。これは240ページしかない一般相対論の入門書としては多い。章ごとに割あてられるページは少なく、物足りない感じはする。しかし、これまでの入門書とは異なった話題が章として取り上げられている。

大きな流れは通常の一般相対論の入門書と同じである。1章は特殊相対論、2章で数学的準備、3章でアインシュタイン方程式、4章は弱い重力場、ここまででかなりコンパクトにまとまっている印象を受ける。

5章は3+1分解に当てられる。次の6章を読むと、著者の意図が分かる。6章は球対称ブラックホールであるが、3+1分解を使い、すっきりとした記述に仕上がっている。ここまでで、基本的な内容は終わりであり、

残りは発展的なトピックであるが、田中氏の圧縮した記述で、半分以上のページが残っている。7章はカーブラックホールやブラックホール熱力学、8章は重力波、9章と10章は宇宙論の基本とインフレーションについてであるが、この2章には65ページが割かれており、読みごたえがある。11章はホーキング放射、12章は最大対称時空についての補章である。

本文には気を付けるべき注意点やおばあちゃんの知恵袋的なテクニックがさりげなく書かれている。もうすでに他の本で一般相対論を学んだことがある人でもこの本から学ぶことは多いと思う。章末の問題は難しい。

(私もそうであったが)平凡な大学生には一般相対論の1冊目の入門書としては難しいかもしれないが、1冊目にせよ、2冊目にせよ、大学4年生ぐらいに読む本であろう。京都大学の学生は難なく読むのだろう。

2024年7月11日木曜日

田中「相対論」を眺めた

田中貴浩「相対論」東京図書(2021年)
を2時間眺めた。
100ページまで進んだ。

2024年7月10日水曜日

井田「現代相対性理論入門」を眺め終えた

井田大輔「現代相対性理論入門」朝倉書店(2022年)
を2時間眺め終えた。

まえがきにも書かれているように本書は難しい。
最初の120ページで特殊相対論と数学の準備に割かれる。
残りの100ページでは、一般相対論があっさりと導入され、ホーキング・エリスのダイジェストの様な感じで特異点定理が述べられる。その後、少しだけ具体的な時空の性質がまとめられるている。

本書は数理的な傾向がある人が相対論の一冊目に良い本だと思う。
普通の物理学の方法を好む人には別の一般相対論の入門書を読んだとしても、この本は難しいだろう。

2024年7月9日火曜日

井田「現代相対性理論入門」を眺めた

井田大輔「現代相対性理論入門」朝倉書店(2022年)
を2時間眺めた。
120ページまで進んだ。


2024年7月8日月曜日

2024年7月7日日曜日

2024年7月6日土曜日

Misnerら「重力理論」を眺め終えた

C. W. Misner, K. S. Thorne, J. A. Wheeler 著, 若野省己 訳「重力理論」2011年、丸善出版
を眺め終えた。1973年に出版されたMTW、Telephotone bookなどの愛称で有名なGravitationの和訳。訳者の若野さんはWheelerの指導の下でPhDを取った弟子であり、Wheelerらとの共著の論文や専門書も知られている。

原書の英語にかなりの癖があるが、本書の和訳は癖のある英語が日本語になって読みやすくなっている箇所もあるが、不自然な直訳で読みにくい箇所も多いし、和訳を頭の中で英語に直して意味を取り直す必要な場合も多い。また、原書では横にあった見出しとしての脚注はすべてページの下に移動させられ、ほとんど意味を失った。また原書のページの上の角についていた初学者向けページを示す「黒塗り1」とそれ以外の「白塗り2」は無くなった。分冊にしなかったことは非常に好印象ではあるものの、原書の魅力は半減していると思う。

物理的な内容自体は原書と変わらない。スタンダードな物理学スタイルであり、現在のスタンダードな入門書と大体同じテーマを扱っている。この本は辞書とも呼ばれ、記述は網羅的であり、最近の本には見当たらない話題も多く含まれている。しかし、実際の辞書とは違い、記述は非常に冗長である。初学者向けと中級者以上向けのページがあるが、中級者向けのページではもっと詳しく知りたければ1973年よりも前の文献(本や論文)を見ろといわれることが多い。私は学生だったときに、この本の原書を眺めていることが多かったが、私がいた小さな物理系学科しか持たない日本の大学の図書館には読めといわれる1960年代以前の洋書がないことも多かった。私にとって、その点で私はこの本を生かし切れなかった。しかし、最近は洋書の教科書がopensourceになっていてinternetで簡単に読める場合も多いので、そのような環境で勉強していた人にとっては、現在の方が本書の価値は高いと思う。60年代の洋書の専門書を参照せよと言われて、すぐに参照できる現在の環境は私が学生だったときには考えられないことだった。

初学者向けのページを選びながら大学3年生から読み始めることができると思う。個人的な好みにすぎないが、かなり辛い直訳の日本語訳よりも癖のある英語の方がましな気がするし、原書にしかない工夫もたくさんあるので、原著を読んだ方が良いと思う。もちろん、翻訳者もかなりの苦労と眺めただけの私には見えない工夫をしているかもしれないので、私にはひどく貶すことはできない。

2024年6月20日木曜日

Misnerら「重力理論」を眺めた

C. W. Misner, K. S. Thorne, J. A. Wheeler 著, 若野省己 訳「重力理論」2011年、丸善出版
を眺め始めた。
2時間で74ページまで進んだ。

2024年6月19日水曜日

Lightmanら「演習相対性理論・重力理論」を眺め終えた

Alan P. Lightman、William H. Press、Richard H. Price、Saul A. Teukolsky著、真貝寿明、鳥居隆 訳「演習相対性理論・重力理論」2019年、森北出版
を眺め終えた。

本書の原書は1975年に出版された「Problem Book in Relativity and Gravitation」である。著者らは別の有名な教科書や有名な論文を書いている研究者である。1970年代の初めには彼らの指導教員の世代が有名な一般相対論の教科書をいくつか書いているので、当時の勢いがある若手がそれらとは異なった特色ある本を作ったという感じなのであろう。訳者は一般相対論・宇宙物理学の研究者である。和訳の日本語は読みやすいと感じた。また原書は問題文と解答分のページが離れている演習書スタイルであったが、訳書である本書では同じページ書かれており、読み物スタイルに近くなった。数式の見た目もきれいになった。訳者による50ページ分の一般相対論研究の進展が付録としてついている。ただし、自腹で買うことを諦める学生がいても仕方がない程度には値が張る。

前半は一般相対論で使う数学を導入しながら学ぶ特殊相対論で、後半は一般相対論である。問題量のバランスは良い。アメリカの大学の普通の物理の過程に沿っている問題の難易度である。数理物理的な問題はない。本書の問題が解ければ、昔の米国スタイルの特殊相対論と一般相対論で解ける問題は自分で解決できるようになると思う。一般相対論の初学者が最初の一般相対論の入門書と一緒に読むときに役立ちそうな基本的な問題と入門書では見かけることはない中級レベルの問題が混ざっている。米国スタイルの教科書が好きな人は楽しめると思う。一般相対論の最初の入門書を読んでいるときに、手元に置いておいてパラパラ眺めておいて教科書の計算のために参照するのに便利だろう。また、時間をかけて全体を眺めておけば、問題を自分で設定するときに解ける問題を作れるようになると思うので、ずっと使える本だと思う。


2024年6月17日月曜日

Lightmanら「演習相対性理論・重力理論」を眺めた

Lightmanら「演習相対性理論・重力理論」を眺めた

Alan P. Lightman、William H. Press、Richard H. Price、Saul A. Teukolsky著、真貝寿明、鳥居隆 訳「演習相対性理論・重力理論」2019年、森北出版

を眺め始めた。

2時間で446ページまで進んだ。

2024年6月15日土曜日

大須賀「ゼロからわかるブラックホール」を読んだ

大須賀健「ゼロからわかるブラックホール」 講談社, 2011年
を読んだ。

一般向けのブルーバックスではあるが、本書を理解するためには物理学科3年生程度の知識があると良い。著者の専門はブラックホール周りの降着円盤のシミュレーションである。そのため、ブラックホール周りの降着円盤について書かれた6章、7章、8章は数式を使った説明はないものの、専門書と同じ程度によく書けていると思う。もちろん、ブルーバックスなので分かりやすさを優先した記述はあると思う。正直に言って、著者の専門から離れた9章はない方が良いと思う。読みにくい9章はほぼ巻末にあるため、9章の存在は通読をそれほど妨げない。10章は残念ながらすでに古くなってしまっている。活動銀河核やブラックホールの降着円盤に詳しくない人や専門書を持っていない人は、本書を手元に置いて4章~8章を繰り返し読むことを強く薦められる程度には良書だと思う。

2024年6月11日火曜日

Lightmanら「演習相対性理論・重力理論」を眺めた

Alan P. Lightman、William H. Press、Richard H. Price、Saul A. Teukolsky著、真貝寿明、鳥居隆 訳「演習相対性理論・重力理論」2019年、森北出版

を眺め始めた。

2時間で86ページまで進んだ。





2024年6月10日月曜日

佐藤小玉「一般相対性理論」を眺め終えた

佐藤文隆,小玉英雄「一般相対性理論」2000年、岩波書店
を眺め終えた。

本書は1992年に出版された同名の現代の物理学シリーズの一冊に修正と補章を追記したものを現代物理学叢書として出版したものである。佐藤氏は普通の物理の本のスタイルで小玉氏は数理物理のスタイルで書くので一冊の本としてまとめらえると、何も知らない読者としてはかなりつらい。特に一章は物理スタイルでとそれ以降の章は数理物理スタイルが主なので、読者はその境目で躓くと思う。一章は本題に入る前の前書きだと開き直ってざっと目を通した後にすべて忘れて、2章からこの本が始まると思って読むことがコツだと思う。

2章からは一般相対論で使う数学の定義が述べられ、様々な定理が証明される。2章は多様体、3章は時空の対称性、4章は一様な宇宙、5章はブラックホール解、6章は正準理論とBianchi宇宙、7章はKaluza-Klein理論、Ashtekhar理論、重力の量子論について述べられている。特異点定理などの大域的トポロジーのことは補章で少し書かれているだけで、本文中には書かれていない。

本書の良いところは一般相対論で使われる数学がコンパクトにまとめられ、それがどのように役立てられているのかを学べるところであろう。一般相対論の本などで数学的すぎて精読ができなかった箇所で使われている数学の確認にも使える。様々なペンローズダイアグラムも見ていて楽しい。

一般相対論を宇宙や天体に使いたい人向きの本ではない。数学を一般相対論に応用することに興味があり、一般相対論の専門的なことを本格的に学んでいる人が本書の内容に特に興味があれば細部まで読むと良いという感じの本である。数学的な道具を準備している箇所や基本的な公式を証明している所はもっと広い読者の層にも役に立つと思う。

2024年6月9日日曜日

佐藤小玉「一般相対性理論」を眺めた

佐藤小玉「一般相対性理論」を2時間眺めた。
156ページまで進んだ。

2024年6月8日土曜日

佐藤小玉「一般相対性理論」を眺めた

佐藤文隆,小玉英雄「一般相対性理論」2000年、岩波書店
を2時間眺めた。
82ページまで進んだ。

2024年6月7日金曜日

小玉「相対性理論」 (培風館)を眺め終えた

小玉英雄「相対性理論」 (培風館,1997年)
を眺め終えた。

本書は特殊相対論と一般相対論の本格的な教科書である。最初の6章は特殊相対論、後半の4章は一般相対論について記述している。全体的な数学的なレベルはWaldのGeneral Relativityと同じ程度、つまり大学院初年度レベルという印象を感じる。特殊相対論の記述も数学のレベルが高いために特殊相対論でこんなに数学を導入する必要があるのかと訝しく思ったが、後半の一般相対論の箇所を読んでいると、「すでに特殊相対論のところで説明したように」という説明に出会い、前半で撒ける布石を見逃さずに撒いているスタイルで書かれているのだと分かる。そのため、後半の一般相対論のところだけ読もうとするとそれらの事柄を習得済みでなければ苦労し、最初から読まないといけないことを悟ると思う。前半の150ページある特殊相対論も数学的準備だけというわけでなく、コンプトン散乱やシンクロトロン輻射などの応用例も丁寧に書かれている。後半の150ページの一般相対論の部分も追加の数学的な道具の説明がコンパクトに詰め込まれ、応用例も豊富である。ブラックホールではKerrブラックホールのペンローズ図、面積増大定理、一意性定理などにも触れ、重力崩壊、重力波についても記述があるし、宇宙論ではインフレーション、非等方性、非一様性にも触れている。全体を眺めた後の感想としては、物理の本としては驚異的に内容を詰め込んでおり、見事であるとも感じる。なお、朝倉書店から同じ著者の同じタイトルの本が出版されているがそれとは別の本である。


相対論を数理的に扱う専門家を志す学生は、別の入門書で一般教養としての一般相対論を学んだあとに、一般相対論の数理物理傾向強めの2冊目の入門書として本書を選こともできるという感じの本である。




2024年6月5日水曜日

小玉「相対性理論」 (培風館)を眺めた

小玉英雄「相対性理論」 (培風館,1997年)
を眺めはじめた。
2時間で106ページまで進んだ。

2024年6月4日火曜日

中村三尾大橋ら「重力波をとらえる : 存在の証明から検出へ」を眺め終えた

中村卓史, 三尾典克, 大橋正健編「重力波をとらえる : 存在の証明から検出へ」、京都大学学術出版会, 1998年
を眺め終えた。

本書は重力波に関する理論と実験に関する教科書である。実験に関しては私は全然わからないが日本語で実験装置について読める本書はありがたい。理論の部分は丁寧に書かれており、現在でも通用する良い本だと思う。ところどころ重力波源としてエキゾチックな現象が紹介されているがうかがえるが、現在では流行っていないものが大半だと思われるので、無視して良いだろう。また、実際に多く観測されることになる重力波の源として連星の恒星質量ブラックホールの合体は記述はほとんどないので、その点に期待して読むと得られることは何もない。

「重力波アンテナ技術検討書ー干渉計ハンドブック」とgoogleで検索すると269ページもある本書の実験部分の雛形を見つけられるだろう。それを印刷して配布されたものの一部が過去にyahooオークションで出回ったらしく、当時の製本された外観も知ることができる。

重力波実験の歴史は短くはない。本書から読み取れる当時の各国の実験計画と進捗具合、予算の見込みと当時の人的資源から察するに、当時から勝ち目はまるでなかっただろう。なぜ逆転を信じて戦いを始めたのだろうと思ったので、経緯を調べてみた。日本におけるレーザー干渉計による重力波研究の第1歩は1988年9月に開催された京都大学基礎物理学研究所モレキュール型研究会「重力波天文学」とされ、1989年度から早川幸男代表の総合研究 (B) によって本格的な検出装置の概念設計が始まったらしい。そして、日本の近代史で習うように、その直後に日本のバブル経済は崩壊した。つまり、高度経済成長を体験した人たちが夢のある計画を始めたのであり、バブル崩壊後しか知らない私には理解できそうもない思考に基づいて始まったのだと分かった。もっと早い段階で日本の現実を受け入れて、地下に観測装置を作るなどの独自性は捨てて、欧米と協力して4点同時観測のために尽力した方がよほど科学に貢献できたと思う。

実験部分は多くの著者によって書かれている。いかに記しておく。
第1章 序論(中村卓史)
第2章 重力波(中村卓史)
第3章 重力波の生成(中村卓史) 
第4章 重力波の源(中村卓史) 
第5章 検出対象と方法(大橋正健)  
第6章 レーザー干渉計(三尾典克) 
第7章 要素技術  
 7-1 レーザー(植田憲一・三尾典克・大橋正健) 
 7-2 防振(河邉径太)
 7-3 制御(河邉径太) 
 7-4 真空系(堀越源一)
 7-5 鏡(大橋正健) 
 7-6 リサイクリング(三尾典克) 
第8章 他の重力理論と重力波(前田恵一) 
補遺A ガウシアンビーム光学(森脇成典)
補遺B 宇宙レーザー干渉計(河島信樹) 
補遺C 光学シミュレーション(佐々木明)
付録(中村卓史)

書評も書かれている。
『パリティ』14巻2号、評者:藤井保憲氏
『日本物理学会誌』53巻12号、評者:小嶌康史氏
『天文月報』91巻9号、評者:高橋竜太郎氏

理論の部分については一般相対論の入門を終えた4年生でも読み始められると思う。

2024年6月1日土曜日

中村三尾大橋ら「重力波をとらえる : 存在の証明から検出へ」を眺めた

中村卓史, 三尾典克, 大橋正健編「重力波をとらえる : 存在の証明から検出へ」、京都大学学術出版会, 1998年

を2時間眺めた。102ページまで進んだ。