2024年6月19日水曜日

Lightmanら「演習相対性理論・重力理論」を眺め終えた

Alan P. Lightman、William H. Press、Richard H. Price、Saul A. Teukolsky著、真貝寿明、鳥居隆 訳「演習相対性理論・重力理論」2019年、森北出版
を眺め終えた。

本書の原書は1975年に出版された「Problem Book in Relativity and Gravitation」である。著者らは別の有名な教科書や有名な論文を書いている研究者である。1970年代の初めには彼らの指導教員の世代が有名な一般相対論の教科書をいくつか書いているので、当時の勢いがある若手がそれらとは異なった特色ある本を作ったという感じなのであろう。訳者は一般相対論・宇宙物理学の研究者である。和訳の日本語は読みやすいと感じた。また原書は問題文と解答分のページが離れている演習書スタイルであったが、訳書である本書では同じページ書かれており、読み物スタイルに近くなった。数式の見た目もきれいになった。訳者による50ページ分の一般相対論研究の進展が付録としてついている。ただし、自腹で買うことを諦める学生がいても仕方がない程度には値が張る。

前半は一般相対論で使う数学を導入しながら学ぶ特殊相対論で、後半は一般相対論である。問題量のバランスは良い。アメリカの大学の普通の物理の過程に沿っている問題の難易度である。数理物理的な問題はない。本書の問題が解ければ、昔の米国スタイルの特殊相対論と一般相対論で解ける問題は自分で解決できるようになると思う。一般相対論の初学者が最初の一般相対論の入門書と一緒に読むときに役立ちそうな基本的な問題と入門書では見かけることはない中級レベルの問題が混ざっている。米国スタイルの教科書が好きな人は楽しめると思う。一般相対論の最初の入門書を読んでいるときに、手元に置いておいてパラパラ眺めておいて教科書の計算のために参照するのに便利だろう。また、時間をかけて全体を眺めておけば、問題を自分で設定するときに解ける問題を作れるようになると思うので、ずっと使える本だと思う。