シュッツ「相対論入門」丸善、1988年
を読み終えた。
本書は一般相対論の入門書である。翻訳本ということもあり、多少癖があるが、丁寧な記述で読みやすい。原書のタイトルはA First Course in General Relativityである。私の手元にあり勉強したのは第一版であるが、第二版の日本語訳も出ている。最近、原書は第三版もでた。翻訳者は一般相対論の研究者、あるいは一般相対論を使った天文学の研究者として知られる江里口良治氏, 二間瀬敏史氏の両氏である。
最初の方は特殊相対論のことが書いてある。すでに特殊相対論の入門は済ませているが詳しくは知らない学生を読者として想定しているようであり、実際に特殊相対論を習ったことがある大学2年生は本書を十分に読めると思う。
特殊相対論の記述が長くて、早く一般相対論に進みたいと思うかもしれないが、本書では特殊相対論の記述は本質的に重要である。なぜならば、電話帳として知られるMTWの「Gravitation」の影響を強く受けている本書では、「特殊相対論では方程式を共変形で書くべきである。そうすれば、一般相対論でも同じ方程式がそのまま成立する」という説明がされているからである。私が持っている本には「物理法則の座標系からの解放」と書かれた帯がついており、本書の記述の仕方を非常によくとらえている。
また、序文にはシュッツ氏の重力波観測への期待とそのための重力波の理論の重要性が熱く語られている。シュッツ氏は本書の著者として、世界的に有名であるが、シュッツ氏の重力波の研究もよく知られている。
日本の相対論の本とは違い、各章末にかなりの数の問題が与えらえている。シュッツは多すぎる問題を載せたので教師が問題を選択することをすすめている。私はすべての問題に挑戦してみたが、かなりの時間が必要であった。自習する人は自分で問題を選び、他の問題は復習用に残しておくべきかもしれない。一部の問題は翻訳者による略解が載せられている。しかし、間違っている答えもある。第二版の翻訳も図書館でチェックしたことがあるが、間違えは修正されていない。
各章末にはさらに勉強するための文献が載っている。私は本書のこの部分の記述が実際に何かの役に立ったことはないが、とても好きである。
本書を読んでいて、計量の逆元の説明だけが、その前後の説明とは雰囲気が違うために分かりにくいなあと感じていた。既習だったので、わかりにくいなあと思いながら、読み通すことができた。読み終わった後に第二版の記述をチェックすると、シュッツ氏は記述を改善したようであり、違和感があった説明が1ページくらい全く書き改めていた。