田中貴浩「相対論」東京図書(2021年)
を眺め終えた。
背表紙と表紙にシリーズの監修者の益川氏と編集者の植松氏と青山氏の名前がでかでかと載っており、ぱっと見、誰が著者なのか全く分からない。ネットで注文するときも同じような感じである。
この本の冒頭には益川氏と植松氏と青山氏の雑談が載っている。相対論の教育や研究とは無縁であろう老人たちのしょーもない雑談である。私はこのシリーズで東京図書が大嫌いになった。
それはともかく、本書は一般相対論の入門書である。著者の田中氏は京都大学の教授であり、日本の相対論分野の若手研究者を引っ張っている人らしい。
補章を含めて12章もある。これは240ページしかない一般相対論の入門書としては多い。章ごとに割あてられるページは少なく、物足りない感じはする。しかし、これまでの入門書とは異なった話題が章として取り上げられている。
大きな流れは通常の一般相対論の入門書と同じである。1章は特殊相対論、2章で数学的準備、3章でアインシュタイン方程式、4章は弱い重力場、ここまででかなりコンパクトにまとまっている印象を受ける。
5章は3+1分解に当てられる。次の6章を読むと、著者の意図が分かる。6章は球対称ブラックホールであるが、3+1分解を使い、すっきりとした記述に仕上がっている。ここまでで、基本的な内容は終わりであり、
残りは発展的なトピックであるが、田中氏の圧縮した記述で、半分以上のページが残っている。7章はカーブラックホールやブラックホール熱力学、8章は重力波、9章と10章は宇宙論の基本とインフレーションについてであるが、この2章には65ページが割かれており、読みごたえがある。11章はホーキング放射、12章は最大対称時空についての補章である。
本文には気を付けるべき注意点やおばあちゃんの知恵袋的なテクニックがさりげなく書かれている。もうすでに他の本で一般相対論を学んだことがある人でもこの本から学ぶことは多いと思う。章末の問題は難しい。
(私もそうであったが)平凡な大学生には一般相対論の1冊目の入門書としては難しいかもしれないが、1冊目にせよ、2冊目にせよ、大学4年生ぐらいに読む本であろう。京都大学の学生は難なく読むのだろう。