阿部博行「小倉金之助 生涯とその時代」法政大学出版局、1992年
を読んだ。
本書は数学史家・数学者・物理学者である小倉金之助の伝記である。阿部氏は数学が不得意とのことで数学などの研究内容に関する記述について期待してはいけない。本書は小倉氏の自伝に沿ったものらしく、それらを検討しなければ、本書の真の価値は判断できないので判断を保留する。本書の記述は平坦であり、読みやすい。小倉氏の一側面ついて大げさに取り上げて批判することもない。幼少時代の背景から死後まで記述は淡々としている。著者が数学や物理にあまり興味がないからであろう。著者の阿部氏は郷土の山形県に関して興味があるようなので、当時の山形関係の記述は本書の特徴なのかもしれない。よくまとまっていると思うが、小倉に対する批評が足りないかもしれないとも思う。
小倉は幼少のことから病弱で、いつも死が付きまとった。当時も過労死する人が多かったらしくて、小倉も恩師が過労死している。小倉は半年程度寝込み、体力回復して働き、また長期間寝込むということ何度も何度も繰り返した。小倉は医師の忠告をよく守ったようで、寝込み始めるタイミングも上手かったのだろう。77歳まで生きた。