H.B. キャレン(著)、小田垣孝(翻訳)「熱力学および統計物理入門」第二版、上1998年・下1999年、吉岡書店
を眺め終えた。
タイトルに偽りなく、熱力学および統計物理入門について書かれている。
熱力学入門+統計物理入門ではなく、
熱力学(450ページ)+統計物理入門(150ページ)である。
日本のよくある熱力学の教科書と違って熱力学の歴史を追わない。
しかし、アメリカスタイルの大量の文章による説明で書かれているためページ数は多い。
熱力学の本だと思うと、もっと洗練した記述にして欲しいし、
統計力学の本だと思うと内容として物足りない。
原書の第一版は1966年であるため、やはり古い記述がある。
大学3年生から大学院初年次用と書いてある。
熱力学と統計力学の一冊目の本としてはつらい。
手元にあるのが一刷であるためか、誤植がかなり多く、本が嚙みまくっている。
上巻のカバー裏にも「列題や問題が数多く与えられているので」と誤植がある。
どうやって間違えたのだろう。
幾何学的な説明が多い。
研究レベルで使用されているらしいデータカタログでの計算が紹介されているのは楽しい。
私は臨界現象について勉強したことがほとんどないため、面白く読めた。でも臨界現象についての記述は20ページだけ。
入門レベルの問題の例題は少ない。
アメリカスタイルの本らしく宿題用の問題が羅列されているが、
解答例は書いていないので、本書では計算技術は全く身に着かない。
訳書独特のとっつきにくさや古さを感じる。
熱力学の歴史の話にうんざりしている人には、
選択肢の一つになりえると思う。
量子力学やベクトル解析を知らなくてもある程度読むことができるため、
大部分は大学2年生から読むことができると思う。