砂川重信「熱・統計力学の考え方」1993年、岩波書店
を眺め終えた。
タイトルは熱・統計力学となっているが、
最後の章に統計力学のことがおまけのように書かれているだけで、
それ以外は熱力学について述べられている。
この本で、統計力学を学べると思わない方がよい。
熱力学については、
私が学生の時に受けた授業とだいたい同じ流れであり、
私には親しみのある説明の仕方である。
砂川氏が本書で指摘しているように、
クラウジウスによる説明の仕方であり、
ほとんどの熱力学の本は
クラウジウスの議論を踏襲した説明となっている。
この本では、クラウジウスの議論で砂川氏が分かりにくいと感じた
箇所が改善されている。
また、演習問題には丁寧な解答がついている。
本書の特色としては
カロリック説と熱力学の対立の歴史をたどりながら説明していることがあげられる。
科学の形成の一例を熱力学の歴史を通して教えることは非常に教育的であると思う一方、
熱力学を学ぶことが目的だとすると歴史は煩わしいとも思う。
また、著者は身近なたとえ話で熱力学と統計力学を説明しようと
試みているが、たとえ話は個人的には好きではない。
読者を男子学生に限定したような例え話は、
黒塗りが必要かもしれない。
全微分や偏微分に慣れていない大学一年生には難しいが
2年生は読めるだろう。