田中信夫「走査透過電子顕微鏡の物理」共立出版、2018年
を眺め終えた。
著者の田中氏は物理の専門家ではなく顕微鏡の専門家らしい。
この本では顕微鏡がメインディッシュで、物理は添え物である。
かなり工学っぽい雰囲気がする。
実験物理の人が書いた物理の教科書のように
理論物理の人にとっては、辛い。
「~です。~ます。」で書かれている。
物理の本ではほとんど見たことがないので、
やりは、物理の本ではないのであろう。
田中氏は名古屋大学の応用物理学科出身らしいが、
私はあまり応用物理というものが存在していることを強く意識して生きてこなかったので、本書から色々と学ぶことがあった。
この本のまえがきには高校物理の物理を仮定し、
大学一年生でも理解できると書いてあるが、
マクスウェル方程式もシュレディンガー方程式も当たり前のように出てくるし
特殊相対論も普通に出てくる。
読んでいると10ページくらいで
「これが応用物理学科のやり方か。」という感想を持つ。
理論物理の人には読めない。
この本を読んでも計算はできるようにならないが、
定番の物理のどの本を読めばいいかは書いてある。
つまり、この本は「走査透過電子顕微鏡の物理」というタイトルがついているが
物理の説明は他の物理の本に丸投げしている。
また、参考図書には田中氏の著作がかなり派手に宣伝されている。
「これが応用物理学科のやり方か。ぐはっ。」
という感想を持ちながら、私は力尽きた。
物理学科の人で、顕微鏡に興味ある人は、
大学3年の量子力学の前半
(シュレディンガー方程式の簡単な解き方を学んだ当たりまで)
を終えたら、この本を読むとちょうどいいと思う。
著者の顕微鏡の知識はなかなかのものなので、
難しいことは読み飛ばして、
読めるところだけ
つまんで読むと十分に面白い。