2025年2月19日水曜日

Boselli「多波長銀河物理学」を眺め終えた

Alessandro Boselli著、竹内努 訳「多波長銀河物理学」共立出版、2017年
を眺め終えた。

原書はフランス語で書かれ、原著は英訳され「A Panchromatic View of Galaxies」となり、日本語訳は英訳を元にしている。
訳者の竹内氏は原著者の所属先のマルセイユ天体物理学研究所で博士研究員としたことがあり、原著者との共同研究もある。

前書きにあるように本書の目的は多波長での銀河の観測に関わった著者の経験を伝授することである。
本書は個別のテーマと暑かった専門書にとって代わるものではなく、それらとともに本書が併用して使われることを著者は望んでいる。
訳者のあとがきによると、本書の著者の専門の低エネルギーの波長の観測と近傍銀河に偏っているそうだ。
フランス語版の出版は1993年、翻訳の元となった英語版は2012年の出版である。
観測装置の改良により新しい成果であふれている高赤方偏移の銀河の観測の話題は少ない。
しかし、高赤方偏移の銀河との比較のためにも、まず近傍銀河を理解しておくべきだという著者と訳者の考えはもっともである。

和書のタイトルには物理学と書かれているが、本書はまぎれもなく天文学の専門書である。
私は天文学を専門的な教育を総合的に受けたわけではないので、本書をどのように読むべきかはよく分からない。
天文学系の卒研や大学院の研究室に配属された後に読む本であろう。

2025年2月16日日曜日

Boselli「多波長銀河物理学」を眺めた

Alessandro Boselli著、竹内努 訳「多波長銀河物理学」共立出版、2017年
を眺めた。
2時間で68ページまで進んだ。

2025年2月15日土曜日

小田「X線天文学 : X線星からブラックホールへ」を読んだ

小田稔「X線天文学 : X線星からブラックホールへ」中央公論社、1975年
を読んだ。

「人間の世紀」第4巻「科学の役割」として1973年に出版された「現代の宇宙観」、1962年から1971年に「自然」誌に掲載された「ガンマ線天文学」、「X線天文学」「X線天文学 その後の発展」、「新X線星の奇妙な振舞い」、「白鳥座に新天体を追う」、1973年に「サイエンス」誌に掲載された「X線星と高密度星」に追記を加え、「ブラックホール Cyg X-1」という一章と加えて出版された本である。

当時の最新の科学的な話題が書かれているが、もう出版から50年も経ってしまったので、最新の科学的知識を知るために読むのではなくて、当時何がどこまでわかっていて、どのような議論があったのかを知るという歴史的な興味を満足するために読まれる本であると思う。かなり専門的な話題が多く、読みごたえはある。

2025年1月15日水曜日

谷口「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」を読んだ

谷口義明「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」光文社, 2019年
を読んだ。

銀河天文学者の谷口氏のブラックホールについての一般書である。1章と4章の一般相対論に関わる話、ブラックホール解、ブラックホール熱力学などに関わる話には間違いがたくさん書かれている。2章と3章は天文学的なブラックホールを説明するために一般的な事柄と具体的な観測を交えて、丁寧に説明されている。最終章である4章で急に自分の研究の押し売りが始まるので、ぎょっとした。私が理解できる分野の範囲内では、大学が出す研究のプレスリリースはほぼすべて過大広告だと思っている。それと同じように、どこまで谷口氏の主張を信じていいのか分からない。

一般相対論に関する多くの間違いについて目をつぶって、天文関係の部分に間違いがそれほどないと信じれば、天文学の一般本としては悪い本ではないのかもしれない。銀河衝突やLISAの話なども書かれているので、そういう話題があるのだなと知る分には良いと思う。ブラックホールシャドーの観測の発表前の本なので、すでに古くなってしまったが。

2024年12月15日日曜日

戸谷「爆発する宇宙 : 138億年の宇宙進化」を読んだ

戸谷友則「爆発する宇宙 : 138億年の宇宙進化」講談社、2021年
を読んだ。

ブルーバックスである。 全体で10章あるが、最初の8章と10章は主にビッグバン宇宙論、超新星、ガンマ線バーストに割かれている。第9章はごく最近の戸谷さんの研究の話題として高速電波バーストが扱われている。天文理論の専門家が書いたおおむね良い本だと思う。悪い点としては、脱線があまりにも多くて長い。気が付いたら脱線しており、脱線中に気を抜くと本筋を見失って、迷子になる。

確かに私が学生だったときは、専門家は超新星爆発のシミュレーションが爆発しなくて困っていたし、ガンマ線バーストも起源が謎なので専門家は困っていた。戸谷さんを含んだ専門家が言うように、最近の10年ほどでこれらはおおよそ解決したらしい。本書ではこれらの分かっていなかったことがどのように解決されたのかということが書かれている。個人的には戸谷さんと問題意識を共有出来て、興味を持って読めた。しかし、このような説明の仕方に満足するのは戸谷さんから私までの中年以上の老人だけであろう。今の若者やこれから天文を志す人たちは、天文の勉強を始めた初期のころからから超新星爆発のシミュレーションはうまくいっているし、ガンマ線バーストの起源も知っているので、この本を興味の持てない古文書のような本だという印象を持つかもしれない。

2024年12月3日火曜日

ホーキング・エリス「時空の大域的構造」を眺め終えた

スティーヴン・W・ホーキング、ジョージ・F・R・エリス「時空の大域的構造」2019年、プレアデス出版
を眺め終えた。
原書は1973年出版のThe Large Scale Structure of Space-Timeである。
二人いる著者の貢献度は分からないが、著者の順番はアルファベット順ではないので、(論文ごとに著者の順番の意味付けは異なるし、本と論文の著者の記載の文化は異なるかもしれないので、あまりあてにならないかもしれないが)Hawking氏の貢献の方がEllis氏よりも大きいと読める。ホーキング氏とエリス氏はともにシアマ(Sciama)氏の弟子である。前書きには本書の一部はHawking氏のアダムス賞の対象となった小論文に基づいていること、アイデアの多くはペンローズ氏とジェロッチ(Geroch)氏によるものであり、彼らのレビュー論文を参照しているとも書いてある。なので、本書を正しく評価するにはそれらのレビュー論文やそこで引用されているであろう大量の原論文を読み込む必要があろう。そのような地道な研究を科学史の専門家に期待する。ちなみにアダムス賞のウェブサイトには1966年の受賞者はPenrose氏で追加受賞者はHawking氏とNarlikar氏と書いてあり、Penrose氏は2020年にノーベル物理学賞を受けたことでも有名である。一般相対論の入門書では原書は専門書として勧められていることが多い。本書は数理的な傾向が非常に強い。しかし、数理的な話題で閉じているわけではなく、それらを物理現象と結び付けて興味深い結果を手繰り寄せる力強さを感じる。

1950年代にイギリスでは定常宇宙論で有名なフレッド・ホイルが連続ラジオ講演で一般に知られており、ホーキングとペンローズにも一般相対論の研究者となるきっかけをあたえた。学生の時に純粋数学のトレーニングを受けていたペンローズはホイルの宇宙論に興味持ったことでシアマと交流を持った。シアマに物理学へと引き込まれたペンローズは物理学に役立つと思われていなかったトポロジーを物理学に導入することで全く新しい分野を切り開いた。その後、ペンローズやジェロッチやシアマの弟子であるホーキングやエリスらが整備していったものが時空の大域的構造と呼ばれるものであり、本書で書かれていることである。1章はイントロダクション、2章は一般相対論で使う微分幾何、3章は一般相対論のラグランジアンや場の方程式、4章は測地線やエネルギー条件、5章は厳密解、6章は因果構造、7章はコーシー問題、8章は特異点定理、9章は重力崩壊とブラックホール、10章は宇宙の初期特異点について触れられている。

訳者は富岡竜太、鵜沼豊、クストディオ・D・ヤンカルロス・Jである。訳者のことは詳しく知らないし、各訳者がどのように作業をしたのかも分からない。経歴から見ると一般相対論の素人である。本書の中には見覚えがある専門用語を使う代わりに、訳者によってでっち上げられたもの専門用語もどきが多数含まれる。ホーキングとエリスによる専門書の翻訳本が一般相対論の専門家の十分な確認を得ることなく出版されたことは訳者と利益を追求した一出版社の罪というだけではなく、このような事態を間接的に招いた怠慢な日本の一般相対論の専門家と学術出版社全体の歴史的大罪である。ところどころ訳者の中途半端な知識に基づいた訳者注が入っている。そもそもホーキングとエリスが書いた文章と読み手である私の間に訳者が存在することも私は気に入らない。自明なtyposも散見される。しかし、ざっと眺める分には英語よりも日本語の方が精神的なハードルが低いという読者もいるだろうから本書の役割がないわけではないと思う。読んでいると、知っているから私は理解できるけれども単純に翻訳文だけでは意味が分からないところもある。初学者にとっては、初学者を欺く怪文と感じられるかもしれない。

一般相対論の専門家のための本であるので、この方向に進む大学院生が読む本であろう。