谷口義明「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」光文社, 2019年
を読んだ。
銀河天文学者の谷口氏のブラックホールについての一般書である。1章と4章の一般相対論に関わる話、ブラックホール解、ブラックホール熱力学などに関わる話には間違いがたくさん書かれている。2章と3章は天文学的なブラックホールを説明するために一般的な事柄と具体的な観測を交えて、丁寧に説明されている。最終章である4章で急に自分の研究の押し売りが始まるので、ぎょっとした。私が理解できる分野の範囲内では、大学が出す研究のプレスリリースはほぼすべて過大広告だと思っている。それと同じように、どこまで谷口氏の主張を信じていいのか分からない。
一般相対論に関する多くの間違いについて目をつぶって、天文関係の部分に間違いがそれほどないと信じれば、天文学の一般本としては悪い本ではないのかもしれない。銀河衝突やLISAの話なども書かれているので、そういう話題があるのだなと知る分には良いと思う。ブラックホールシャドーの観測の発表前の本なので、すでに古くなってしまったが。