2024年12月15日日曜日

戸谷「爆発する宇宙 : 138億年の宇宙進化」を読んだ

戸谷友則「爆発する宇宙 : 138億年の宇宙進化」講談社、2021年
を読んだ。

ブルーバックスである。 全体で10章あるが、最初の8章と10章は主にビッグバン宇宙論、超新星、ガンマ線バーストに割かれている。第9章はごく最近の戸谷さんの研究の話題として高速電波バーストが扱われている。天文理論の専門家が書いたおおむね良い本だと思う。悪い点としては、脱線があまりにも多くて長い。気が付いたら脱線しており、脱線中に気を抜くと本筋を見失って、迷子になる。

確かに私が学生だったときは、専門家は超新星爆発のシミュレーションが爆発しなくて困っていたし、ガンマ線バーストも起源が謎なので専門家は困っていた。戸谷さんを含んだ専門家が言うように、最近の10年ほどでこれらはおおよそ解決したらしい。本書ではこれらの分かっていなかったことがどのように解決されたのかということが書かれている。個人的には戸谷さんと問題意識を共有出来て、興味を持って読めた。しかし、このような説明の仕方に満足するのは戸谷さんから私までの中年以上の老人だけであろう。今の若者やこれから天文を志す人たちは、天文の勉強を始めた初期のころからから超新星爆発のシミュレーションはうまくいっているし、ガンマ線バーストの起源も知っているので、この本を興味の持てない古文書のような本だという印象を持つかもしれない。