小平邦彦「ボクは算数しか出来なかった : 小平邦彦・私の履歴書」、日経サイエンス社、
1987年
を読んだ。
日本人初のフィールズ賞およびウルフ賞受賞者である数学者の小平邦彦の自伝である。文章は硬すぎず、丁度良い。話題の選び方も日本とアメリカの数学の研究や教育だけでなく、アメリカから日本の大学に頼まれて戻ってきたが、口約束が反故にされたり、退職金が少なくて困ったことなどの職場の恨みつらみも軽快につづっている。今となっては、すべての話題が古いので、「アメリカではこうだ」という短絡的な読み方をするとトラブルのもとになるかもしれないので、その点は注意が必要かもしれない。日本とアメリカの大学には何十年も前にこういう時代があったのだということを意識しながら読んだ方がいいだろう。総じて非常に読みやすくて、非常に面白い本である。