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2025年5月15日木曜日

藤原正彦「管見妄語 始末に困る人」を読んだ

藤原正彦「管見妄語 始末に困る人」、2011年、新潮社
を読んだ。

数学者である藤原正彦氏による週刊新潮に連載されたエッセイ集。数学や数学者の話は少ない。私のお気に入りとしては、毎週エッセイを書くためにネタを見つけることに苦労していて、書き上げるために2,3日かかることを説明している「はじめに」を挙げておく。

2025年4月17日木曜日

佐藤ルフィーニ「ブラックホール」を眺め終えた

佐藤文隆、R.ルフィーニ「ブラックホール」2009年、筑摩書房
を眺め終えた。

ちくま学芸文庫の一冊。文庫版あとがきが付いている。歴史的な流れに沿って、コペルニクスから始まり、ニュートン力学、特殊相対論、一般相対論、恒星や白色矮星、中性子星、ブラックホールなどを説明していく。後半は天体物理学と一般相対論が半々という感じである。もともとは1976年に中央公論社から出版されたものなので、読み進めていき、最近の研究の話題に近づくほど内容が古く感じられることに注意が必要である。

ルフィーニ氏の歴史的導入を含む一般教養的な集中講義のレジュメを構成の第ゼロ近似とし、佐藤氏の大学院生向けの集中講義を下敷きにして作られたとのこと。一般書としても専門書としても中途半端なものになってしまったというあとがきの佐藤氏のコメントが本書の構成の特徴をよくとらえていると思う。また、ルフィーニ氏はホイーラー氏の元で研究していたので、本書の内容と図表はホイーラー氏のグループのリソースを引き継いでいるとのことである。

富松佐藤解についての詳しい説明など佐藤氏らしい記述とキップ・ソーン氏の一般書などでお馴染みのホイーラーのグループの一般書らしい内容が一冊の本でみられるという珍しい本であると思う。

本書の数式を追うには一般相対論を教科書でやっていないと厳しいだろうから大学4年生が読むのに適していると思う。


2025年4月16日水曜日

佐藤ルフィーニ「ブラックホール」を眺めた

佐藤文隆、R.ルフィーニ「ブラックホール」2009年、筑摩書房
を眺め始めた。
2時間で178ページまで進んだ。

2025年4月15日火曜日

藤原正彦「管見妄語 大いなる暗愚」を読んだ

藤原正彦「管見妄語 大いなる暗愚」、2010年、新潮社
を読んだ。

数学者の藤原正彦氏の週刊新潮に連載されたエッセイ。数学や数学者の話は少ないので、それをあまり期待してはいけない。藤原氏やご家族のことを知ることを楽しめれば、楽しく読めるだろう。私のお気に入りとしては、フェルマーの最終定理を証明することで数学者として燃え尽きたワイルズらについて書いた「天才の寿命」を挙げておく。

2025年3月15日土曜日

富松「ブラックホールと時空」を読んだ

富松彰「ブラックホールと時空」共立出版、1985年を読んだ。

モダン・スペース・アストロノミー・シリーズの一冊。大学で一般相対論の半期の講義を受けた後か入門的教科書を一通り終えた後に読むと良いレベルの大学院レベルの現代的な一般相対論の解説書。数式も多用されており、教科書と一般書の中間的なスタイルであるが、扱っている題材は大学院レベルの教科書であるWaldのGeneral Relativityの主要部分と変わらないと思う。ミンコフスキー時空、コンパクト天体、シュバルツシルト解を説明した後、無限遠、ペンローズ図、地平面、測地線束方程式、特異点定理、ブラックホールに関する定理、定常ブラックホールの性質、ブラックホール熱力学、ホーキング放射などについて、数式と図を使って、丁寧に説明されている。円錐特異点なども閉じた時空的曲線なども丁寧に説明されている。とても良い本だと思う。



著者の富松氏は一般相対論の定常真空解の富松佐藤解の発見者として有名な一般相対論の研究者である。

セグレ「エンリコ・フェルミ伝」を読んだ

エミリオ・セグレ「エンリコ・フェルミ伝」みすず書房、1976年
を読んだ。

翻訳者は久保千鶴子氏と久保亮五氏であるが、翻訳は主に久保千鶴子氏の手によって行われたとあとがきに書かれている。久保千鶴子氏は物性物理や統計力学で著名な物理学者である久保亮五氏の妻である。久保亮五氏は本書で語られるフェルミ氏と同じ棟つづきの別の研究所で働いていたこともあるとのことで、コロキウムなどでフェルミ氏の議論ぶりに感嘆することはあれど、特に会話を交わす機会を求めなかったことを、あとがきで残念がっている。

本書はエミリオ・セグレ氏によるエンリコ・フェルミの伝記である。原書はEmilio Segre「ENRICO FERMI PHYSICIST」 The University of Chicago Press, 1970である。著者のセグレ氏はフェルミ氏の弟子であるが年の差はあまりなく、4歳ほど若いだけである。セグレ氏は反陽子の発見でノーベル物理学賞を受賞している実験物理学者としても知られている。また、本書を含め、物理と物理学者への愛があふれた一般書の著者としてもよく知られている。本書は多くの資料と自身の体験に基づいて書かれた、380ページもあるもの本格的なフェルミの伝記であるが、セグレの著作らしく読みやすい。

フェルミ氏は核反応でノーベル物理学賞を受賞しているが、フェルミ氏は理論物理学者としても実験物理学者としても一流であった最後の物理学者として知られ、最初の原子炉の開発も行い、マンハッタン計画でも主要な役割を果たした。フェルミ氏は53歳で病死したため、本書を読んでいると、晩年らしい記述もほとんどない状態で、あっという間に死んでしまうために、私には少しショックであった。セグレ氏によると死ぬ数年まえには、フェルミ氏が人生の残りの時間を有効活用するために、物理の興味を絞ったという記述があるが、超人的すぎる晩年のエピソードだと感じた。また、不十分な防備策のまま行われた核反応の実験的研究が病気の原因であることに晩年のフェルミ氏が気が付いていたと読める記述がある。

フェルミ氏は研究や講義では本質をとらえた具体的な記述を好み、理論のフォーマリズムにはほとんど興味を示さなかったようで、他の研究者によって抽象化されたフェルミ氏自身の理論にも関心がなかったようだ。そういうことを知ったうえで、フェルミ熱力学を読み直すと風情が増すと思う。また、フェルミ氏が若い時に大学教員の職を得るために苦労したというエピソードにもかなり紙面が割かれていて、昔は今よりもずっと職を得ることが大変なんだなとも思った。

マンハッタン計画についての箇所では、フェルミ氏の伝記というよりもセグレ氏やフェルミ氏らを含んだ物理学者の体験談という側面が強く出ている。このような本は後年の物理学者には書くことはできないだろう。

多くの人が、本書を通して、知らなかった多くのことを発見するだけでなく、フェルミ氏やセグレ氏に親しみを持つことができると私は思う。