佐藤文隆、R.ルフィーニ「ブラックホール」2009年、筑摩書房
を眺め終えた。
ちくま学芸文庫の一冊。文庫版あとがきが付いている。歴史的な流れに沿って、コペルニクスから始まり、ニュートン力学、特殊相対論、一般相対論、恒星や白色矮星、中性子星、ブラックホールなどを説明していく。後半は天体物理学と一般相対論が半々という感じである。もともとは1976年に中央公論社から出版されたものなので、読み進めていき、最近の研究の話題に近づくほど内容が古く感じられることに注意が必要である。
ルフィーニ氏の歴史的導入を含む一般教養的な集中講義のレジュメを構成の第ゼロ近似とし、佐藤氏の大学院生向けの集中講義を下敷きにして作られたとのこと。一般書としても専門書としても中途半端なものになってしまったというあとがきの佐藤氏のコメントが本書の構成の特徴をよくとらえていると思う。また、ルフィーニ氏はホイーラー氏の元で研究していたので、本書の内容と図表はホイーラー氏のグループのリソースを引き継いでいるとのことである。
富松佐藤解についての詳しい説明など佐藤氏らしい記述とキップ・ソーン氏の一般書などでお馴染みのホイーラーのグループの一般書らしい内容が一冊の本でみられるという珍しい本であると思う。
本書の数式を追うには一般相対論を教科書でやっていないと厳しいだろうから大学4年生が読むのに適していると思う。