を読んだ。
著者のダニエル・ケネフィックは、アイルランド国立大学で学士号と修士号を取得し、カリフォルニア工科大学で物理学の博士号を1997年に取得した。その後、カーディフ大学とカリフォルニア工科大学で博士研究員を行い、2003年にアーカンソー大学の教員となった。専門は重力波とその歴史である。本書を含めて、一般相対論に関する歴史の本を出版したり、専門的な編集活動を行っている一方で、重力波の論文も書いている。少なくとも博士課程のころから、物理学と物理学史の二刀流のようだ。ケネフィックの論文を調べるのはgoogle scholarがよい。範囲が広すぎで、inspire hepでは拾いきれない。
また、著者は研究者2体問題の成功者のようだ。著者の妻であるジュリア・ケネフィックはアーカンソー州出身の天文学者で、1989年にアーカンソー大学で物理学の学士号を取得し、1995年に博士号を取得し、オハイオ州立大学とオックスフォード大学で博士研究員として研究を行った後、2003年にアーカンソー大学に物理学科の准教授となった。専門は活動銀河核である。彼らの家族には子供3人と犬1匹、ネズミ2匹もいて、大学の近くに住んでいるとのことだ。
本書の主な内容は著書が博士課程での研究に基づいている。カリフォルニア工科大学での物理学の指導教員であったキップ・ソーンが著者に提案した研究である。著者は歴史に関してはダイアナ・バックウォルドを指導教員としている。本書には重力波や一般相対論の研究者へのインタビューや新たに出てきた資料や著者の研究会での体験などが含まれている。最初、本書は一般書だと思っていたが、読み通すと専門書だと分かった。読み通すためには、少なくとも、物理学科での一般相対論の一年間の課程に相当する知識は必要だと思う。
重力波の研究は少ない研究者によって進められたわけではなく、何十年も多くの研究者が少しづつ貢献することで、現在の教科書に載っている形になっているのだと分かる。非常に良い本である。重力波とその研究者に親しみがわく。もし学生だったときに本書を読んでいれば、私は重力波の研究者を志していただろうと思う。
本書の訳は良くない。物理学科を卒業していれば、当然知っているべき力学の専門用語も訳者がでっちあげた専門用語もどきに訳されている。単純に日本語としておかしい箇所もたくさんある。日本語では意味不明だが、頭の中で英語に変換すると英語として意味が通るような箇所もたくさんある。著者が本書を書くためにどれだけ時間をかけたかと想像すると、心が痛む。