藤井保憲「重力とスカラー場」講談社、1997年
を眺め終えた。
修正重力理論の業界では常識とされているが
研究を始めたばかりの卒研生や大学院生には謎のスカラー場について
丁寧に書かれた本。古い本なので最新の研究のネタが見つかるわけではないとおもうが、
スカラー場を研究する面白さや動機が丁寧に書かれている。
卒研生はそもそもスカラー場を使って一般相対論を修正する理由が分からないまま
卒研を終えることが普通なので、とても良い本だと思う。
些細な誤植はかなり多いが、一般相対論で類似の計算をしていれば、本書の計算は楽に追えると思う。
指導教員や業界の研究者はBrans-Dicke理論、ディラトン理論、共形変換、非最小結合、物質結合、スケール不変性、Jordanフレーム、Einsteinフレームという謎の言葉を説明なく使うと思うが、本書を読めばすべての用語が理解できて、すっきりするだろう。
素粒子の話題もちょくちょく書かれている。それらをあまり気にしないのであれば、一般相対論の入門を終えた4年生あたりがちょうど良いレベルの本である。本書内の素粒子の話題もちゃんと追いかけようとすると、素粒子の標準理論を理解していないといけないので、修士課程か博士課程の院生レベルだと思われるが、私はそのレベルには達していないので、そんなことを判断する資格はないと思う。