2019年11月15日金曜日

吉永良正「秋山仁の落ちこぼれは天才だ」を読んだ

吉永良正「秋山仁の落ちこぼれは天才だ」1993年、講談社、(2004年、講談社文庫)
を読んだ。

数学の教育者として有名な秋山仁氏の伝記的な本。

特に、日本の大学で仕事を確保した後にミシガン大学のフランク・ハラリーの研究員として
「一日一論文」のモットーに従って論文を大量生産するエピソードは多産な研究グループ特有の雰囲気を感じて興味深い。

秋山仁氏が伝統ある数学についていけなくても、自分でもできることがありそうな比較的若い数学であるグラフ理論に取り組んだエピソードや修士号取得後に仕事探しに苦労している最中に思わぬコネで大学の助手の仕事を手にしたエピソードなどは大学で仕事を得るためには諦めの悪さと運が重要だということを教えてくれる。

以上のことから、本書は一読に値する楽しい本。


個人的には、高校生や大学生だったときにNHKのラジオで語学番組を聞き、そのままラジオをつけたままにしていると秋山氏の軽快な語りの数学の番組が流れることがあった。そのままなんとなく聞いていたくなるような語り口だったことが思い出。

本書を読んで、秋山氏がグラフ理論を研究している数学者だと始めて知った。


以下はネガティブな感想。

吉永氏の記述は軽く、表層的にすぎる。後半では数学者による文章がたびたび引用されるが、それらの文章は重みがあり、読んでいて心地いい。そのせいもあり、吉永氏の文章が軽さが目立つ。

大学入学以前の落ちこぼれエピソードにもかなりページ数が割かれているが、ありきたりで、特に面白い記述もないので、代わりに数学について書いてほしかった。

最後の秋山氏のメッセージで数学で長年苦しんだので数学をやめて新しいことに挑戦したいと書いてあることが悲しい。今後も秋山氏に数学で苦しんでほしい。

秋山仁氏がどのようにして数学と付き合ってきたのかということが書かれているが、秋山氏の数学そのものについてはほとんど何も触れられていない。

秋山氏の数学者としての力量はこの本からは全く計り知れない。最も同じ時代に研究した同じ分野の研究者でないと研究者の力量を測ることは難しいだろうから、私はあまりにも多くのことをこの本に望んでいるとおもう。