スティーブン・W・ホーキング(訳)林一「ホーキング、宇宙を語る」1989年、早川書房
を読んだ。
原著は1988年に出版されて世界的なベストセラーとなったという「A Brief History of Time」である。
私の手元にある本のよると初版は1989年6月15日発行で
39版は1990年11月30日発行とあるので、
日本でもベストセラーになったようだ。
この本は物理の一般書としては最も難しいものの一つといってよい。
この本があまりにも難しいため、この本が出版されたすぐ後に、
本書の内容をもっと易しく解説した本が多く出版された。
一般相対論、宇宙論、ブラックホール、量子力学、素粒子に関することが
一冊の本としては驚異的な密度で詰められて紹介される。
当時も今も量子重力理論は完成していないが、
この本の公判では古典重力理論である一般相対論と量子力学を同時に使った
面白い物理が紹介されている。
内容の配置も物理の教科書や授業のシラバスのように良く練られている。
後半の話題のいくつかはホーキングが共同研究者と研究したものであり、特に難しい。
この分野の研究者になって、元ネタの論文を理解しないと後半部分は理解できないだろう。
訳者の林一氏は物理の専門家であるため、
この本の翻訳は日本語の大学レベルの物理の教科書に慣れている人にとっては親しみやすい日本語であると感じる。
しかし、1989年には日本語訳が定まっていなかったであろう原初ブラックホールなどの専門用語は
現在では別の日本語訳で定着したので、今読むと時代を感じる。