下村裕「ケンブリッジの卵」(慶應義塾大学出版会、2007年)を読んだ。
著者は慶応大学で流体力学を研究している物理学者。2000年3月末から2年間慶應義塾大学塾派遣留学という制度でケンブリッジに滞在した著者の体験記。正確には2006年までの研究について書かれている。
滞在2年目から始まったモファット教授との共同研究が主な題材であり、ゆで卵をテーブルに置いて回転させたときの運動を理論物理学的に取り扱っている。昔ながらの紙とペンで研究するタイプの理論物理学者が実際に卵を回してみたり、パソコンで数値計算をして、具体的な現象をどのように研究しているかがわかるという点でも興味深い。
記述は読みやすい文章で書かれており、物理学を学ぶ人も教える人もこの本から学ぶことは多いだろう。