を読んだ。
ブルーバックスの一冊である。著者の森本氏は天文学者で、数学者・森本清吾と森本治枝の次男としても知られている。ウィキペディアのリンクを貼っておく。
電波天文学の解説書である。入門的な話から始められているが、全体として著者らの研究を含めて専門的な話が多い。あとがきには宇宙背景放射、電波で見た銀河、準星などの話題を詳しく書きすぎて、他に書きたかった話題について詳しく触れることができなくなってしまったと書いてある。読んでみると確かにそのような構成になっている。観測結果とその解釈についてかなり踏み込んで書かれており、当時の電波天文学には説明できない観測結果がたくさんあったことが伝わってくる。超新星爆発やビッグバンの説明は大雑把すぎて怪しいところもあるが、著者の専門から離れているため仕方がないと思われる。なお、銀河系中心や準星がブラックホールかもしれないとは一切書かれていないが、X線パルサーがブラックホールかもしれないということは書かれている。観測装置については、50年も前の話だが、当時の電波望遠鏡の規模はすでに限界ぎりぎりに達しているようで、その限界を超えるためのさまざまのアイデアは現在使われているものと同じように見えた。
古くなってしまっている箇所が散見するが、基本的なことであまり変更がないところも多いと思う。電波天文学の面白さが伝わってくる良書だと思う。