2026年5月15日金曜日

ホーキング「時間順序保護仮説」を読んだ

スティーブン W. ホーキング(著)、佐藤勝彦(監訳、解説)、佐々木節、千葉尚志、友清理士、降旗康彦(翻訳協力)「時間順序保護仮説」、1991年、NTT出版を読んだ。

ホーキングは一般相対論や曲がった場の量子論の有名な研究者であり、その一般書は世界的にホーキングブームを引き起こしたため、一般に広く知られている。解説の佐藤勝彦氏も宇宙論の研究者で著名であり、当時は東京大学理学部教授であった。当時は国内でもホーキングブームがあり、佐藤氏の一般書もそれなりに売れていたと思う。翻訳協力の佐々木節は宇宙論や一般相対論で著名な研究者であり、佐藤氏の弟弟子にあたる。千葉尚志氏は佐藤勝彦氏の弟子として博士号取得後、企業に勤めて、分野を変えて、最近ではZEN大学で教員をしている。友清理士氏は1992年に東京大学で宇宙物理学で修士号を取得し、株式会社研究社に入社したらしい。他の人との関係は今のところよく分からないが、友清氏は大学在学中、つまり、本書の話がある前から、翻訳の勉強をしていたらしく、現在でも歴史作家や翻訳家として活躍されているようである。降旗康彦氏は佐藤勝彦氏の弟子で、1995年に東京大学で博士号を得て、現在では旭川高専教授となっている。

本書はIs evrything determinded?(1990年2月、「すべてのことは予めどうなるかが定めらえているのだろうか?」)、The future of the universe(1991年1月、「宇宙の未来」)、Einsten's general relativity and quantum mechanics(1991年6月、「アインシュタインの一般相対論と宇宙論」、NTTデータ ニューパラダイムセッション’91”アインシュタインの夢”での講演)、
The chronology protection conjecture(1991年6月、「時間順序保護仮説」、マーセル・グロスマン会議、京都での講演) の翻訳の後に、佐藤勝彦氏の解説が続き、最後にホーキングの4つの原文がそのまま載っている。巻頭にはホーキング氏が来日したときの写真が数枚記載されている。薄い本で、内容のレベルも専門家レベルのもと一般書レベルのものが、混ざっている。ホーキングブームに乗って、とにかく、なんでもいいから詰め込んで、ページ数を増やして、体裁を整えてしさえすれば、一般書として売っても、大きな罪にはならないでしょう。という態度を企画のNTTデータ通信がとってできた本だと推測される。もちろん、私の邪推にすぎない。

佐藤氏の解説は一見関係ありそうに書かれているが、実は佐藤氏とホーキングとの最近の思い出話や、自説のインフレーションモデルの宣伝だったりする。最初と二つ目のホーキング氏の講演については米国などでの講演としか書かれておらず、全く解説する気がないことが透けて見える。そのため、どこでどのような経緯で行われた講演なのか、さっぱり分からない。それとは別のホーキング氏とともに参加した全然関係ない会議のことはたくさん書かれているけれども。なので、解説は期待してはいけない。翻訳が誰によって、どのように分担されて行われたのかも、何一つ書かれていない。3つ目の講演の経緯もさっぱり分からない。解説としての価値はほとんどないと思う。本を売るために、翻訳協力の4人がほとんどすべての翻訳を行い、翻訳にはほとんど関わっていないにも関わらず、佐藤氏が監訳ということになっていれば、アカハラやパワハラでもあるし、オウサーシップ的な問題になるのかもしれない。

最初の三つは一般向けの講演だと思われ、ホーキングの一般書のような感じである。4つ目はホーキングの論文の時間順序保護仮説についての講演であり、専門的である。専門家は4つ目のものを楽しめるだろう。